掲載日: 文章:阿佐 智

2016年シーズン観客動員からNPBファームを考える3:阪神編

 現在のNPBの2軍運営は両極に分かれている。それをあくまで「ファーム」ととらえ、基本的にはそれで「商売」する気がない球団と、積極的に集客のコンテンツ、マーケティングの手段としようとしている球団である。前者には、初回で取り上げた東京ヤクルトが、後者の例としては2回目で紹介した福岡ソフトバンクが属している。各々の球団の姿勢は、そのまま観客動員数にあらわれているが、今回取り上げる阪神タイガースは、本来的には、ファームで「稼ごう」という姿勢は見せていないものの、抜群の動員力を誇る異色のチームである。

抜群の動員力をなぜか生かさない人気ナンバーワンファーム

阪神ファーム01

 阪神タイガースと言えば、NPBの人気チームというだけでなく、メジャーリーグのトップチームにひけを取らない観客動員力を誇る名門球団である。ビッグマーケットの関西地区で地域に密着し、絶大な人気を誇りながら、全国区的支持も集める、集客力という点では非の打ちどころのないスーパー球団と言える。

 その人気はファームにおいても同様で、本拠地での試合は、ほぼ全試合満員といっていいほどの盛況である。しかしながら、これをランキングに置き換えると、ソフトバンク、巨人に続く3位ということになってしまう。さらに言えば売り上げということになれば、このランキングはさらに順位を落とすことになるだろう。なぜならば、58試合中39試合を催したホームの鳴尾浜球場での主催試合では阪神球団は入場料を徴収していないのである。

 鳴尾浜のキャパシティに対する観客の割合である収容率は実に91.4%。1軍のトップ人気チーム並みの数字だが、肝心のキャパシティが500人しかないため、本拠での動員数は17836人に留まる。データをみると、観衆500人の試合が多いが、実際こういう試合に足を運んでみると、通路までぎっしりという試合も少なくなく、実際は収容人数以上に入っているだろう。おそらくもっとキャパシティの大きい球場をフランチャイズにすれば、もっと多くの観客を動員できるに違いないが、阪神球団は、「ファームの試合はファンへのサービス」ととらえ、2軍戦の常時有料化には踏み切ろうとしない。

 そもそも、寮や室内練習場と一体化した選手の育成施設である「タイガーデン」の中心として建設された鳴尾浜球場は、1994年竣工で、翌年から本格的に使用を開始したものである。この時代はまだファームをプロ球団として興行に利用するという発想は、日本にはなく、せっかくの「弟分」をビジネスツールとして活用できるような大きなスタンドをこの球場に備えつけなかった。

キーワード

新着記事